絶対見ない方がいいです「誰も知らない」 | つぶやきかさこ

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新作レンタルで期待して早速借りてきた。
事実をもとにした作品なので外れも少ないだろうと思っていた。
しかし、とことんくずですね。開いた口がふさがらない。
これは映画と呼んでいいのでしょうか?
こんなものが商品として世の中に成り立ってしまうのでしょうか。
製作スタッフは恥ずかしくないのかな。

事実に基づいているからテーマとかストーリーはしっかりしているわけです。
それをいかにダメに見せるかという観点から撮っているような作品。
せっかくのテーマが台無し。もうどうしようもないです。

一言でいえば悲惨なテーマ、深刻な問題を、格好良く撮ろうとしている。
それがダメな根源ですね。
配役にしても流れるBGMにしてもくさいセリフにしても映し方にしても。

物語を簡単に説明すると、お母さんがどっかにいっちゃって、
12歳以下の子供たち4人が暮らす話。
どんどんお金がなくなってきて悲惨な生活になり、
ついには子供一人が死んでしまう。そういう話です。

ところがそういう悲惨さがまったく伝わってこない。
わざとそうしてるんだろうけど、それがわざとらしくて、
作り物の映画に見えてしまう。とても事実をもとにした話とは思えないわけです。
撮り方もほんと見え見えのいやらしさ。
たとえばお母さんが前に娘につけてくれたマニュキュアの爪が、
お母さんが帰ってこなくなってしまったからどんどん落ちてしまっている、
みたいなものをあからさまに娘の爪だけだらだら長く映したりする。
そういう狙いが見え見えのものが多すぎてかつ長すぎて、
「そんなことわかってるよ!」と思うわけです。
そういうのはもっとさりげなく、視聴者が気づくか気づかないかのディテールとしてやれば、
それがより効果的になるのに、そういうディテールをこれみよがしにやられると引いてしまうわけですよ。

全体にいえることはむやみやたらに長すぎる。
もっとシーンの長短をつけないと、だらだら間延びした映画になりかねない。
意味もなくずっと同じシーンを必要以上に長く映し続ける傾向があり、
そのせいで2時間30分ほど時間をくってしまっている。
意味のない長さはしらけさせるだけです。

一番許せなかったのは妹の死。
つまり親がほったらかしにしてその結果、子供が一人犠牲になってしまったけど、
それは誰も知らないまま、時が流れてしまうという大事なシーンなわけです。
しかしね、死体を埋める時の主人公のセリフがあまりに下手かつ情けない。
「すごくすごく冷たくなってて、それが、それが・・・」

わざとらし過ぎる。情がこもってない。
本当に妹が死んで子供がそんなしごくまっとうなセリフをいうだろうか。
もっと動揺したり、もっと感情的になったり、
逆に事実が受け止められず無感情になったりとか、多分そういう身に迫った感があると思うんだけど、
あのシーンを見ても主人公の悲しさが伝わってこない。

さらによくないのはそこに登校拒否の中学生だか高校生の女の子を登場させていること。
「誰も知らない」というテーマを貫くには、
妹を埋葬するシーンは兄と姉とかでやってもらいたいわけですよ。
そこに外部のまっとうな家庭の女の子が登場してしまう。
お母さんがいないぐらいならまだしても人一人死んでしまったら、
普通、その女の子はもっと動揺したり、下手をするとどっかにばれてしまったりするんじゃないか。

人が死んでもそれに中途半端につきあって、
しかもそれをこれみよがしに、真っ白なブラウスが埋葬したから土で汚れましたみたいな、
ほんとこういうわざとらしいいかにもというのは吐き気がします。
そんなことしなくても、この凄まじさは伝わるわけじゃないですか。
もっとさりげなくやってほしいですね。

この女の子も主人公もお母さん役もそうだけど、
なんかみんな格好良すぎるのがすごく違和感があった。
この事実のもとになったキャラクターを反映しているのだろうか。
もっとくせがあったりとかちょっとどこかずれてしまっているようなところがあるとか、
普通の人とは違う臭気みたいなものを出せるキャラクターに配役すべきじゃないか。
なんだか、みんなまっとうすぎて、頭で作ったできすぎの学園劇みたいになっている。

あとは描き方が下手なのか、事実もそうだったのかはわからないけど、
この家庭の現実が「誰も知らない」ことにならないんじゃないかというシーンが、
何度となくこの映画では描かれてしまっている。
たとえば家賃を全然払えなくなっているから、一度上の階に住んでいる大家さんに子供だけの生活を見られてしまう。
その後、何ヵ月も家賃を払っていないわけだから、
大家に見つかりそうなもんですよ。
あとは、コンビニのアルバイトにも家庭事情を話してしまっている。
そのアルバイトは警察に言った方がとかいっている。
そういうところから漏れる可能性高いんじゃないのと思ってしまう。
そして登校拒否の女の子。あの子は頻繁に出入りしていて、一人の死にも直面してる。
いくらなんでもそこまで来たら何らかの形でばれちゃうんじゃないの?
あとは子供の姿があきらかにみすぼらしくなり、
服が汚れ髪がぼさぼさになっていて公園で洗濯とかしてる。
そういうところからばれないのかなと思う。

事実は上記のようなことをしているけど、今は誰もが他人に無関心な世の中だからわからなかった、
ってことになるんだろうけど、この映画の描き方をみていると、
大家にしてもコンビニ店員にしても女の子にしても、
そういう今時の無関心人に見えない。
これは映画の描き方が下手だからでしょう。配役もそうだし選んだ場所とかもそうだろうし。

せっかくテーマがいいのだから、こんなテーマを台無しにするような描き方をしても、
何も伝わらない。
こんな無意味な描き方をするなら、この事実を特集で組んで、
なぜこういう事件が起きたのかを考える、
ニュース番組の20分ぐらいの特集映像で十分だと思う。

ほんとくずです。

・映画論評