悪者を作って内部の問題から目をそらせる手法 | つぶやきかさこ

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問題のある集団が手っ取り早くまとまるためには、
集団外にでっちあげてもいいから「敵(悪者)」を作ることである。
外部に敵を作れば内部の本質的な問題から目をそらさせることができるわけだ。

この観点から最近の3つのニュースが読み取れる。
中国の過剰な反日運動。これはまさしくこのカテゴライズに当てはまる。
日本が安保理の常任理事国になることに対して、猛反発が起き、
中国各地で日系スーパーが襲撃され、数千人規模のデモにまで発展しているという。

もちろんこういっは根強い反日運動が繰り返されるのは、
日本自身の姿勢や対応に問題があることも大きな一因である。
アメリカに騙され、アメリカの武器を購入するために、
アメリカと同じくして中国を仮想敵国にしたり、
こともあろうに、こんな反日騒ぎのひどい時に、
火に油を注ぐかのように教科書検定が発表され、
ことごとく日本の残忍な侵略記載が削られた。
これでは中国が怒るのも仕方がないかもしれない。

しかし、と思う。
今回起こしているデモや騒動の大半が20代の若者中心だというのだ。
つまり、日本が犯した過去の過ちを実体験させられた年配世代ではないという点だ。
ようは、観念だけの反日なのである。

20代の中国人が生きている間に、日本がひどい行いをしたことはないだろう。
にもかかわらずこのような過剰反応するのは、
明らかに中国政府による民主化防衛のための過度な愛国教育が原因だ。

中国の若者のパワーが政府に向いたのが1989年の天安門事件である。
中国の若者が堂々と既成勢力に文句を言って行動してしまった。
この衝撃から中国はこの種の民主化運動を徹底的に弾圧するだけでなく、
そのような発想を生まないよう、若者に過度な愛国教育と、
そのために日本敵国思想を植え込んだというわけだ。
だから観念でしかない中国人の若者が、いわば若さゆえの有り余るパワーを、
民主化しない中国政府に向けることなく、最も手っ取り早い日本に向いたというわけだ。

私は中国に何度か取材や旅行で行っているが、
中国東北地方などは特に旧満州国であることから、
反日モニュメントとしての博物館や記念館などが、1990年代に新設されているのをこの目で見た。
確かに、日本はひどいことをした。
しかし、それが単なる歴史的事実の理解だけにとどまらず、
度を過ぎて中国愛国主義に結びつけようとする意図がみえみえなのだ。

このようないわば「洗脳」によって、今の若者の力を、
内部の問題に向かせることなく、外の敵国=日本に向けることに成功したのだろう。
急激な経済成長による貧富の差の拡大や、経済自由度と伴わない政治的自由度の低さが、
日々、中国人の中に鬱積していて、日本の安保理問題が格好の的になったわけである。
こうして日本を敵にさせておけば、中国政府権力維持には好都合なのだろう。

外に敵を作って内部の結束を固める2つ目の例は、
先のワールドカップ・アジア最終予選の北朝鮮VSイラン戦だろう。
審判およびイラン選手に文句をいい、試合が終わっても観客が取り囲むなどして、
騒然とした前代未聞の状況だったらしい。
もちろん、審判の判定そのものもおかしさはあるにせよ、
それにしてもちょっと異常事態だ。
結局これも、常に不満がくすぶっている北朝鮮人民のある種のガス抜きみたいなもので、
どうせ政府なり警察なりなんなり、権力側が煽ったのだろう。
そういう外にパワーを費やしてくれれば体制批判へのエネルギーを削げるという原理だ。

この2つの例をみてわかるように、政治的圧力下におけるストレス発散の場を外に設けることで、
自分たちの権力保持につとめる極めて単純なやり方だといえる。

さて最後の例、これがアメリカである。
ご存知の通り2001.9.11以来のアメリカの保守化はちょっと尋常ではない。
「テロとの戦い」という相手不定の漠然とした仮想敵ではわかりにくいから、
「悪の枢軸」という具体的な国名をあげることで、
国民の意識を外に向け、財政赤字・貿易赤字というとんでもない財政危機状況から目をそらせ、
ブッシュという無能なリーダーを再選させる後押しにさせたのだ。

この原理は中国政府や北朝鮮政府のやり口とまったく変わらない。
外に敵を作ることで国内問題は目をつぶらせたわけである。
だからブッシュが再選された。

実は日本だって変わりはない。
過剰な北朝鮮拉致問題のヒステリック的取り上げ方にしても、
北朝鮮というわかりやすい悪者を作ることで、 日本国民をまとめやすくさせようという魂胆だ。
しかしこの点、日本政府は実に冷静に対応していて、
むしろマスコミが弱腰だといってあらぬ方向へと煽っているという、
逆説的な状況が現出しているのは興味深いことかもしれない。

敵を作ることでしか団結できない集団は、内部そのものに矛盾や問題を抱えている証拠だから、
いずれその化けの皮がはがれることはあるのだが、
この種の最も単純なプロパガンダによる洗脳は、
時にとんでもない行動を引き起こす可能性が高いので、
日本も未だ進歩のない教科書作ってないで、
なるべく洗脳国家を刺激しないように、
かつ内部問題に気づかせるような外交力が必要な時代なのだろう。

By かさこワールド